私たちの周囲にあるモノ(オブジェクト)は、それぞれに異なる形をもち、さまざまな意味や歴史を内包しています。そして、オブジェクトをどのように捉え、そこからなにを見いだすかは、相対するひと毎に異なり、オブジェクトはインタラクションの度に違う姿を見せます。
本講座では、アート作品や学術資料など、豊かで複雑な意味や歴史を内包するオブジェクトの観察に根ざした対話を根幹に据える「オブジェクト・ベースト・ラーニング」の方法論に基づき、自らのコンテクストを確認しながら、他者との対話を通じて対象に関する知識と理解を発展させ、多様な価値観を受け入れていく方法を学びます。
また、オブジェクトを用いた共同実習、ディスカッションを通じて、既存の前提を問い直していく思考を身につけること、また、ミュージアム・コモンズの情報環境を活用したデジタル・ファブリケーション実習を通じて、自らの思考を創造的にアウトプットする方法を学んでいくことをねらいとしています。
本講座は、対面での開講となります。希望者多数の場合は抽選を行う予定です。
(抽選結果は 9月29日(金)18:00以降、「履修申告」画面で確認できます。「不許可」の表示がない場合は、履修が許可されています。)
授業の内容について詳しくは、下記のガイダンスビデオでも紹介していますので、参考にしてください。
https://youtu.be/N2On8RrCnSc
講座キーワード:アート、芸術、文化財、学術資料、対話、デジタル・ヒューマニティーズ、共創、ファブリケーション
各学部での単位の取り扱い
第 1 回 | オブジェクトとのインタラクション(イントロダクション)
授業の進めかた、全体テーマを確認する。 |
第 2 回 | オブジェクトを/から学ぶ:Object Based Learning(OBL)入門 ①
OBLとは何か、KeMCoの収蔵作品を用いて、OBLの基礎を学ぶ。
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第 3 回 | オブジェクトを/から学ぶ:Object Based Learning(OBL)入門 ②
OBLとは何か、前回の見学を踏まえてディスカッションする。
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第 4 回 | ミュージアムのオブジェクト:禅の美術をつぶさに見る
ミュージアム・コモンズの「禅の美術」をテーマとした展覧会を見学し、OBLのワークを行う。
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第 5 回 | 古典籍へのまなざし:斯道文庫を訪ねる
古典籍の研究所、斯道文庫(三田キャンパス)を見学する。さまざまな古典籍を実見し、古典籍をオブジェクトとしてつぶさに観察する方法を学ぶ。
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第 6 回 | オブジェクトとしての書物:三田メディアセンター貴重書室を訪ねる
三田メディアセンターの貴重書室を訪ね、洋書コレクションを対象にオブジェクトとしての書物について考える。
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第 7 回 | ディスカッション:観察して記述すること
自らのコンテクストを確認しながら、他者との対話を通じて対象に関する知識と理解を発展させ、多様な価値観を受け入れていく方法についてディスカッションする。
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第 8 回 | ミュージアムのオブジェクト:版画のマテリアリティに触れる
アート・センターの展覧会「駒井哲郎展」を見学し、OBLの実習を行う。
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第 9 回 | 複製芸術とマテリアリティ:デジタルとアート
複製芸術のマテリアリティから出発し、アートとデジタル・テクノロジー/メディアの関係について考える。
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第 10 回 | デジタルデータをオブジェクトとして見る
高度に情報化された社会のなかで、オブジェクトはどのように発展し、あるいは変容していくのか。最先端の研究動向を交えて、実空間とデジタル空間が「繋がる」ことで生じた事象・変化を概観しつつ、その可能性を展望する。 |
第 11 回 | デジタルデータとオブジェクト ①
文化財の記録・保存目的のみならず、VRやARをはじめとするヴァーチャル・ミュージアムでの活用も進んでいる三次元(3D)表現。本回では、3Dの可能性について、受講生とともに考える。
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第 12 回 | デジタルデータとオブジェクト ②
文化財をはじめ、人類数千年の歴史のなかで蓄積されたきたモノ・コトは、如何にして共有されえるのか。ミュージアム・コモンズでも取り組んでいるLinked Open Data(展開)を軸に、グローバルなデータ空間の仕組みと利活用について学ぶ。
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第13回 | モノとコトを記述する
展覧会を、モノと、モノを巡る活動によって構成される出来事と捉え、KeMCoの展覧会を具体的な対象として、出来事の記述について考える。 |
第14回 |
ディスカッション・まとめ
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※ 本設置講座は、慶應義塾大学学部、研究科の正規在籍者のみを対象としています。学外の方の履修・聴講はできません。