慶應義塾のキャンパスを歩いていると、様々な文化財に出会います。建築、そのそばに立つ彫刻や、壁に掛けられた絵画、なぞめいた石碑から、縄文・弥生・古墳時代の遺跡まで、これはなんだろう?と足を止めた方も多いのではないでしょうか。さまざまな物語をたずさえて、長い時間をかけて集まってきた文化財コレクションによって彩られたキャンパスは、ひとつのミュージアムのようです。
慶應義塾ミュージアム・コモンズでは、デジタル技術を活用して、これらのコレクションをさまざまな切り口から掘り下げ、共有していきます。今回は、360°画像でキャンパスの文化財を紹介する試み「キャンパス・カルチャーウォーク 360°」をお届けします。まずは三田キャンパスから、続いて他のキャンパスも取り上げていく予定です。
建築物や美術作品については、すでに公開されているパンフレットやウェブサイトもありますので、こちらも是非アクセスしてみてください!
三田キャンパス 歴史芸術ガイド(編集:慶應義塾広報室)
https://www.keio.ac.jp/ja/assets/download/about/learn-more/publications/index/history-art-guide.pdf
慶應義塾大学アート・プロムナード ガイド(編集:アート・センター)
http://www.art-c.keio.ac.jp/research/research-projects/promenade/pmn-guide/
※ マップ・オーディオガイドもあります!
⬇︎各画像をクリックすると、360°画像が展開され、マウスやタッチ操作で見る角度・視点を自由に変えられます。また、画像左上のアイコンを使ってズームイン・アウトや全画面表示も可能ですので、是非「全方位」から三田キャンパスをお楽しみください。
三田キャンパスの中庭が、「名建築の庭」であることをご存じでしょうか。
正面北側には、曽禰中條建築事務所による第一校舎と塾監局。西と東には、槇文彦による大学院校舎と図書館新館が建っています。正門側の南校舎の3階には、塾員・教職員ラウンジ「社中交歡 萬來舍」があります。社中交歡 萬來舍にも彫刻や絵画が展示されています。
槇文彦の設計により、1981年に竣工した図書館新館。旧館の八角塔をイメージした意匠を取り入れるなど、キャンパスの他の建築や空間との調和が図られています。メディアセンターの機関誌「KULIC」(現MediaNet)には、槇文彦が「設計のねらい」を寄稿しています。入り口の宇佐見圭司の壁画も必見です。
槇文彦設計、1985年竣工。
大学院校舎は、慶應義塾創立125年記念事業の一環として建設されました。2階の吹き抜け空間と、外階段に繋がるテラスが印象的な建物です。テラスから中庭を見下ろしながら、休み時間を過ごした方も多いのではないでしょうか。第一校舎側に並ぶベンチなど、細部の意匠にも注目してみてください。
曽禰中條建築事務所設計、1937年竣工。
質実剛健なファサードを持つ第一校舎は、第二次世界大戦の戦災を免れた建物です。校舎中央部に設けられた、3層吹き抜けの階段ホールが印象的です。廊下部分はすこし薄暗い印象ですが、吹き抜けや教室には窓が多く、光があふれる空間になっています。
曽禰中條建築事務所設計、1912年竣工。国指定重要文化財。
三田キャンパスのシンボル、図書館旧館。図書館旧館前は、塾監局、図書館新館に囲まれた、フォトジェニックなスペースになっています。東側の広場には、朝倉文夫の彫刻《平和来》(1952)と《還らざる学友の碑》(1998)が設置されています。
図書館旧館の八角塔の裏手には、「文学の丘」と通称される小高い丘があります。
久保田万太郎や小山内薫ら、慶應義塾ゆかりの文人の記念碑や胸像が立っています。
関東大震災後に、曽禰中條建築事務所の設計によって建てられた塾監局。塾務を扱うさまざまな部局が集まっており、内部は一般公開されていません。外観には、フランク・ロイド・ライトが帝国ホテルで使用して以来、公共建築に多く利用されたスクラッチ・タイルが豊富に使用されています。
西校舎の北側、研究棟の西側の小広場には、菊池一雄《青年像》(1948)、飯田善國《星への信号》(1984)が設置されています。飯田善國の作品はもう一つ、図書館新館の入り口に《知識の花弁》(1981)があります。
図書館旧館とともに、国の重要文化財に指定されている演説館。普段は非公開ですが、「福澤先生ウェーランド経済書講述記念講演会」や、毎年秋に開催されている建築公開イベント「建築プロムナード」などで公開されています。
かつて、第二研究室の談話室として、谷口吉郎とイサム・ノグチが共同して作り上げた「ノグチ・ルーム」(1951)。南館の建設に伴い、隈研吾によるリデザインを経て、現在は南館3階のルーフテラスに「旧ノグチ・ルーム」として移設されています。
ミシェル・デヴィーニュ設計による庭園には、イサム・ノグチの彫刻《無》(1950-51)が立つほか、南館のエントランス部分にも《学生》(1951)《若い人》(1950)の2体の彫刻が展示されています。
西校舎の生協食堂には、猪熊弦一郎の壁画《デモクラシー》(1949)が展示されています。この作品はもともと、谷口吉郎設計の学生ホール内に設けられた学生食堂の東西壁面に描かれていました。学生ホールの一部がキャンパスの北側に移された際にも、この壁画は引き継がれ、長く山食のデモクラシーとして親しまれていました。学生ホール取り壊しに伴い、現在の食堂に移設されています。